2017年7月2日日曜日
アメリカ人の緑内障と日本人の緑内障;原因も治療法も異なる!
5月に東京大学で緑内障の治療法の開発について講演したが、アメリカ人の緑内障は80%が眼圧が21mmHg以上の高眼圧緑内障で眼圧を下げる手術で治療している。しかるに、日本人の緑内障は眼圧が低い正常眼圧緑内障であり(80%)、 眼圧を下げる手術は有効ではない。正常眼圧緑内障は日本人に特に多く緑内障の約80%を占める。一方、米国では正常眼圧緑内障は約20%であり、80%は眼圧が21mmHg以上の高眼圧緑内障である。 そのため米国では緑内障の治療法は手術で眼圧を下げることである。一方、日本人の正常眼圧緑内障は眼球や高眼圧と言うよりも視神経の病気であり、その原因は視神経の脆弱性であると考えられている。視神経の脆弱性を治療すれば進行を止められる。正常眼圧緑内障(眼圧が10~20mmHg)は眼圧が原因ではないので、眼科手術で眼圧を下げても治らない言うことになる。ところが、眼科に通院すると眼圧が正常であっても更に眼圧を下げるべく手術を奨められる。日本の眼科医が正常眼圧緑内障に対し更に眼圧を下げる手術を行おうとする根拠は以下の論文による。米国での多施設共同研究の結果では無治療時眼圧から30% 以上の眼圧下降を得られた群と無治療群では視野障害進行に有意の差があり, 眼圧下降が有効であることが報告されている。また,無治療時の眼圧が正常平均15mmH以下の例に対する眼圧下降の有効性については十分な検討がされていない. 実は、米国のこの研究では最高眼圧が21mmHg以上の緑内障も含まれており、日本人の正常眼圧緑内障と同じ患者が対象ではない。日本人の正常眼圧緑内障の平均眼圧は最高眼圧で16.6~16.7mmHg, 最低眼圧が11.5~11.6mmHgである。したがって、日本人より高い眼圧レベルで試験された眼圧下降療法の有効性を日本人の正常眼圧緑内障治療に適用することは議論の余地がある。にもかかわらず、眼科医は眼圧を下げないと悪化するからと手術を強くすすめる。 また、この米国での実験では十分な眼圧下降を行っても20%の症例で視野障害が進行し、無治療の症例でも約40%の症例に視野障害が進行しなかった。このことから、米国のこの論文では正常眼圧緑内障の原因には眼圧以外の危険因子の存在に言及している。更に言えば、米国の正常眼圧緑内障は60才以上の高齢者に多いことが分かっている。また、偏頭痛の人に多く、血流が悪いことが関係しているとも言われている。日本人の正常眼圧緑内障とは年齢分布が異なる。これらの知見から、米国における緑内障は手術によって眼圧を下げれば治るが、日本人のように、眼圧が正常の緑内障では手術によって眼圧をさげても緑内障には効果が無いことがわかる。眼科医が米国での高眼圧緑内障に対する眼圧降下療法の結果に基づいて、低眼圧の日本人患者に手術などの治療を強行してよいのであろうか? 実際には、正常な眼圧をさらに下げても緑内障が治るわけではない。ある中年の女性は眼圧が正常以下の8mmHgであるのに緑内障の視野狭窄が年々、急速に進行して免許の更新が出来なくなるのを心配して来院した。 また、筆者の外来には緑内障専門の眼科医が自身が緑内障を患い、中国伝統医学による治療を求めて通院している。眼科医も本当は正常眼圧緑内障は手術などで眼圧を更に下げても緑内障を改善することは出来ないのを知っている。正常眼圧緑内障の原因は眼圧ではない。 この度我々が新しく開発した中国伝統医学による緑内障治療法は個々人の緑内障の病態に合わせたオーダーメイドの処方を用いることにより、数ヶ月の治療でほぼ全例に視野の改善が認められた。
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