2016年10月30日日曜日

特発性膝骨壊死は漢方薬による治療でなおる

数年前、70代の老婦人が膝の激痛で歩くことも座ることもできないため、整形外科でMRIをとった。その結果、脛骨骨壊死と診断され手術を勧められた。壊死の範囲が狭い場合は、自然治癒することもありますが、多くの場合、骨切り術や人工膝関節単顆置換術といった手術が必要になります。この方は以前に漢方薬を服用したことがあり、是非漢方薬で治療したいと来院した。 伝統医学に基づいて詳細に診察したところ、この方は内臓、特に胃腸や骨格の水分が不足しており、その結果、内臓への血流が著しく少なくなっていた。 内臓に潤いを与え、血流を良くする生薬を中心に24種類を処方して煎じて飲んでもらった。 1ヶ月後には痛みはかなり軽くなった。 さらに2ヶ月後には痛みは疲れたとき感じるだけで、日常的には消失した。更に3ヶ月煎じ薬を処方し、痛みが無くなったことを確認して治療を終了した。その後2年たつが再発の兆候はない。特発性膝骨壊死は西洋医学では手術する以外には治療法はなく、治りにくい病気であるが、漢方医学的見地からすると治療はそれほど難しくはない病気である。西洋医学の難病は漢方医学にとっては必ずしも難病でないことが多々ある。 

サルコイドーシスの漢方治療(Herbal therapy for sarcoidosis)

サルコイドーシス(sarcoidosis)は、肺、リンパ節、皮膚、眼、心臓、筋肉など全身諸臓器に肉芽種ができる難病で、原因不明の現在は根治療法はない。臓器障害が重症の場合や生命に関わる症例(中枢神経病変、心病変等、腎病変))に限ってステロイド治療が現在行われている。しかし長期間のステロイド服用は副作用が強くてできないので効果があった時点で減量・中止する必要があるが、ステロイドの減量で再発する場合も多く治療に難渋する。 最近、全身倦怠感、空咳、微熱、下肢に力が入らないなどの症状と共に、霧視、飛蚊症、眼圧上昇などサルコイドーシスによるブドウ膜炎の症状で、中年の女性が漢方治療を希望して漢方内科外来に来院した。 サルコイドーシスの肉芽種のマーカーである血清ACEは非常に高い。詳細な伝統医学的鑑別診断を行い、それに基づいて25種類の植物性及び動物性生薬を組み合わせた処方を作成した。この処方を服用してから1ヶ月後には血清ACEが低下し、2ヶ月後には微熱や空咳なども消失した。3ヶ月後には下肢に力が入らない、全身倦怠感など自覚症状も消失し、眼圧も低下し、ぶどう膜炎も軽快していた。話は違うが原因がサルコイドーシス以外の場合の緑内障による眼圧上昇にも漢方治療が有効である場合が多い。サルコイドーシスが治癒するか否かは更に治療を継続して今後の経過を観察する必要があるが、少なくともステロイド治療以外にサルコイドーシスの治療法があることが明らかになった。 

うつ病は漢方薬で完治する!(Successful treatment for depression)

一昨年の秋に50代の婦人がうつ病と診断された。朝は憂鬱で起きれない、不安で悲しくて気分が落ち込み行動の抑制がある。 典型的なうつ病であった。伝統医学的診断では五臓六腑の中でも心、胃腸、神経の機能障害が認められた。 この病態に対して17種類の生薬を組み合わせた処方を作成した。此の処方を服用して一ヶ月で朝の憂鬱、不安、悲哀感などほとんどの症状が消失した。更に2ヶ月ほど同じ処方を継続したところほかの症状も改善したためうつ病は治癒したとして漢方治療は終了とした。この方は心療内科や精神科にかからずに最初から漢方治療を受けた。西洋医学の抗鬱剤や精神安定剤や抗不安剤などは服用していなかったので漢方療法で早期に治癒できた。実は数年前に此の人と対照的な二人の30代の男女がうつ病の治療を求めて漢方外来に来院した。二人とも5年以上の長期間、精神科や心療内科で抗鬱剤、精神安定剤、抗不安剤、睡眠薬などを5〜6種類も処方されていた。しかし、治療を続けても薬の量が増える一方で、一向にうつ病は治らないため社会復帰ができない。此の二人の伝統医学的診断は病理学的に正反対の病態であった。したがって、治療生薬の内容も真逆の作用の処方であった。診断に基づいて25〜30種類の生薬を配合した処方を作成した。此の二人の治療は効果が現れるまで5〜6ヶ月かかったが一番苦労したのは精神科の薬をやめる事であった。 漢方処方が効いてくると早朝に頭痛が起きるようになる。此の頭痛は実は抗鬱剤の副作用であった。抗鬱剤をやめると頭痛は無くなった。また、安定剤や睡眠薬をやめるのが最も難しい。 睡眠薬の量を90%、80% 70%と数か月間かかって一ヶ月に10%ずつ減量してゆく必要があった。 一気に減量するとその夜は一睡も出来なくなる。 これは麻薬の禁断症状のようなものである。精神科の薬を減量してやめるのに更に一年近くかかってしまったが、その後は漢方薬も含めてすべての薬を止めたが再発しないので、治療は終了した。今は、二人とも社会復帰している。このように伝統医学では、うつ病は精神や心の病気ではなく五臓六腑の病気であり対応する漢方薬で治癒することが可能である。ただし、発病早期に漢方治療することができれば早く治るが、抗鬱剤や精神安定剤で長期間治療した後では漢方治療が奏功するまでに長期間かかってしまう。しかし、漢方治療が有効であるといっても、いわゆる漢方薬のooo湯でうつ病が治るということではない。ある人は漢方医のところで、oo湯とoo丸を処方されたが効果がはっきりしないと言ってきたが、理由は個々人で異なるシステム異常に対応した生薬を組み合わせたカスタムメイドの処法を作成することで初めて有効な治療になると言うことであり、既成の漢方方剤では効果は期待できない。実際、伝統医学のシステム理論と生薬の高度な知識が無ければ、診断もできないし、有効な治療する生薬の処方を作成するすることもできない。 

同じ漢方薬がてんかんにも骨髄異形症候群にも緑内障にも、脊髄小脳変性症にも糖尿病にも効く?

最近、骨髄異形成症候群の方を治療中に、当方のクリニックでは、いろんな厚生省指定の難病を漢方薬で治療しているが、そんなことが可能なのか疑問ですと言われた。血液の専門医が神経の病気や緑内障など眼科の病気を治療できるのか?  実は、西洋医学の病名は漢方医学には存在しない。いろんな難病が漢方医学では同じ証(漢方医学の病名)である場合がある。 同じく、漢方医学の病名は西洋医学の病気とは異なる。 従って、ある人が骨髄異形成症候群であった場合、漢方医学で診断すると糖尿病の他の人と同じ病気である場合がある。 その場合、骨髄異型症症候群の治療と糖尿病の治療は同じ処方になる。このように、漢方医学では同じ処方が糖尿病、緑内障、脊髄小脳変性症、筋ジストロフィー、など色々な難病の治療に使われる事がある(異病同治)。また、西洋医学で同じ緑内障と診断されても人によって漢方医学の病名は違う。 緑内障各人の漢方医学の病名は異なるので各々に対応する処方で治療する(同病異治)。 最初の質問のに対して以下の用に回答した。「当クリニックでは厚生省指定の多くの難病は漢方医学で診断し漢方医学の病名をつけるので、西洋医学の病名ではなく、漢方医学の病名に基づいて漢方薬の処方で治療することが可能である。」 漢方専門医は血液の病気も糖尿病も神経の病気も緑内障も漢方医学では五臓六腑の病気であると診断するので治療することができる。

2016年10月19日水曜日

糖尿病性網膜症の漢方生薬による治療法

糖尿病網膜症は、糖尿病腎症・神経症とともに糖尿病の3大合併症のひとつで、成人の失明原因の第二位となっています。ちなみに中途失明の原因の第一位は緑内障です。網膜には栄養を補給する多くの血管が走行しています。血糖が高い状態が長く続くと、網膜の細い血管は少しずつ損傷を受け、変形したりつまったりします。血管がつまると網膜のすみずみまで酸素が行き渡らなくなり、網膜が酸欠状態に陥り、その結果として新しい血管(新生血管)を生やして酸素不足を補おうとします。しかし、この新生血管はもろいために容易に出血を起こします。また、出血すると網膜にかさぶたのような膜(増殖組織)が張ってきて、これが原因で網膜剥離を起こすことがあります。これらが進行していくと、最悪、失明します。
網膜症は糖尿病発症から5年くらいで増加し始め、10年で50%の人が網膜症を発症します。 しかも、自覚症状があった時にはすでに取り返しがつかなくなった増殖網膜症の段階であることが多いのです。
網膜症の治療ですが、検査で網膜症が見つかったからといって、急激な血糖コントロール(今流行している炭水化物ダイエットなどで食事のカロリーを大幅に減らしたり、運動量、糖尿病の薬の量を倍に増やすなど)はかえって網膜症を悪化させます。理由は炭水化物が分解された糖質は脳や網膜の唯一の栄養素であり、糖質が少ないと脳や神経や網膜などがが正常に働くことができないからです。

2016年10月9日日曜日

関節リウマチと間質性肺炎の漢方生薬に治療法

10年ほど前に某医科大学の呼吸器科で特発性間質性肺炎と診断された50代の女性が来院した。 特発性間質性肺炎は原因不明の難病で治療法はない。肺が硬くなって呼吸ができなくなる病気で、歌手の美空ひばりさんがこの病気が原因で亡くなっている。2〜3種類の漢方処方を組み合わせて治療したところ、肺組織破壊のマーカーが徐徐に低下してきたが正常値にはならない。ところが、2年前に手足の関節痛が出現し、精密検査の結果、関節リウマチと診断された。厳密な伝統医学的診断に基づいて抗リウマチ作用のある生薬を含む約20種類の煎じ薬を処方したところ関節痛は消失し、炎症反応も正常になり、しかも肺組織破壊のマーカーも正常値以下になった。現在も生薬治療を続けているが、関節痛もなく、炎症反応も正常化したままで、リウマチ反応も正常値以下となった。 肺組織破壊のマーカーも正常値以下のままである。 あと、数ヶ月様子を見て悪化しない場合は治癒したと考えて生薬治療も終了する予定である。 この方の間質性肺炎は関節リウマチによるものであり原因不明の特発性間質性肺炎ではなっかたのである。 このように、肺病変が関節リウマチに先行して発症する場合も少なからず存在する。 関節リウマチの漢方薬による治療成績は良好であり、約80%の奏功率との報告もある。 しかし、漢方治療が有効であるといっても、いわゆる漢方薬のooo湯で関節リウマチが治るということではない。ある人は漢方医のところで、oo湯とoo丸を処方されたが効果がはっきりしないと言ってきたが、理由は個々人で異なるシステム異常に対応した生薬を組み合わせたカスタムメイドの処法を作成することで初めて有効な治療になると言うことであり、既成の漢方方剤では効果は期待できない。実際、伝統医学のシステム理論と生薬の高度な知識が無ければ、診断もできないし、有効な治療する生薬の処方を作成するすることもできない。

シェーグレン症候群は漢方生薬治療で治す

中年の女性が涙がでなく目が乾燥するため某大学病院で診療を受けた結果シェーグレン症候群と診断された。唾液が少なく口が渇く、涙が少なくて目が乾燥するなど全身の乾燥症状がひどいため漢方治療を希望して来院した。症状は口渇、朝のこわばり(手指)、膝痛、顔の火照り、右上眼瞼の痙攣、自汗、便秘、痰が多いなど。唾液腺シンチグラム、 唾液量検査、 涙量検査にてシェーグレン症候群と診断された。その他の検査所見ではリュウマチ反応 陽性、抗核抗体 陽性であった。 伝統医学の診断では肺の乾燥と熱及び神経系の興奮であったので対応する22種類の生薬を煎じて服用することとした。1ヶ月後に口渇、手のこわばり、便秘、痰は改善、3ヶ月後に眼瞼痙攣消失。 4ヶ月後には乾燥症状は消失したため治療は終了とした。シェーグレン症候群膠原病の一種でドライアイ、ドライマウスなどの乾燥症状ばかりでなく関節痛や皮膚症状、慢性甲状腺炎(橋本病)、慢性胃炎など種々の臓器の異常を伴う。ドライアイなどの乾燥症状には人工涙などの対症療法しかない。内臓の病気を伴う場合はステロイドホルモン治療などを行う。伝統医学ではこれらの症状に対して個々人の病態を分析し、それに対応する有効な治療法がいくつも考案されている。 ほとんどの場合数ヶ月で症状の軽快が見られる。 

てんかんの大発作が伝統医学による漢方生薬で治る

以前に拙著「病気を治せない医者」やブログでてんかんは漢方治療で治るということを書いたところ、では大発作を繰り返すようてんかんでも治りますかとの質問があった。2014年1月に25才の女性が10年前からてんかんの大発作(意識消失、痙攣)を繰り返すということで、漢方内科に来院した。10年前の発病当初は専門医にテグレトール、デパケンなどを処方されたが、副作用が強くでたので直ちに中止となった。 それ以降薬物治療は行っておらず10年にわたって意識消失と間代性痙攣を伴う大発作をくりかえして起こしていた。伝統医学的診断にもとづいて、26種類の生薬処方を作成した。2015年6月まで1年6ヶ月間にわたる治療により伝統医学的病態は正常化したため、治療は終了とした。 この間、てんかん発作は起きていない。 また、2016年2月現在まで(伝統医学による治療開始より2年間)てんかん発作は全く起きていない。治療終了後、この方はめでたく結婚した。

多系統萎縮症(脊髄小脳変性症)は胃腸の薬、高血圧の薬や鎮痛剤など様々な薬剤で悪化する。

ここ十年にわたって脊髄小脳変性症の治療を行ってきたが、伝統医学の治療によりせっかく症状の改善が見られたのに、 内科や整形外科、心療内科で胃腸薬、高血圧の薬や鎮痛剤、抗精神病薬などを処方されて症状が悪化してしまうケースが少なくなく困っている。 脊髄小脳変性症の中でも特にパーキンソン症候群を引き起こす多系統萎縮症の場合、錐体外路症状の悪化が甚だしく、薬をやめてもなかなか回復しない。この病気は薬剤性パーキンソン症候群とよばれる。これらの薬物がパーキンソン症候群を引き起こすメカニズムは当該薬物が ドーパミンを遮断する為、多系統萎縮症でみられるパーキンソン症候群を悪化させるということである。抗精神病薬ではセレネース(ハロペリドール)、コントミン(クロールプロマジン) 、ヒルナミン(レボメプロマジン)、 フルデカシンやフルメジン(フルフェナジン)、トリラホンやピーゼットシー(ペルフェナジン)などは、ドーパミン遮断作用が強力で、薬剤性パーキンソン症候群を生じやすい。ジプレキサ(オランザピン)、リスパダール(リスペリドン)、セロクエル(クエチアピン)も同様である。胃腸薬であるとともに抗鬱剤でもあるドグマチール、アビリット、ミラドールなども錐体外路症状を起こす。抗鬱剤トフラニール(イミプラミン)、トリプタノール(アミトリプチリン)、アモキサン(アモキサピン)、ルジオミール、マプロミール、ノイオミールなど(マプロチリン)、テトラミド(ミアンセリン)、パキシル(パロキセチン)、ルボックス、デプロメール(フルボキサミン)、トレドミン(ミルナシプラン)、サインバルタ(デユロキセチン)なども同様に錐体外路症状を引き起こす。抗精神病薬以外にも、消化管蠕動促進薬であるナウゼリン(ドンペリドン)やプリンペラン、プラミール(メトクロプラミド)、胃酸分泌抑制薬であるガスター(ファモチジン)やザンタック(ラニチジン)などの抗ヒスタミンH2受容体阻害剤、サンディミュン(シクロスポリン)、リューマトレックス(メトトレキセート)などの免疫抑制薬、インターフェロンα、一部の抗生物質、リーマス(炭酸リチウム)でも同様の症状が生じることが知られています。アポプロン、ベハイド(レセルピン)は中枢性血圧降下薬であるがパーキンソン症候群を起こしやすい。頻度は少ないが血圧降下剤ではアルドメット(メチルドーパ)、アダラート(ニフェジピン)、ヘルベッサー(ジルチアゼム)、カルスロット(マニジピン)、ノルバスク、アムロジン(アムロジピン)なども報告されている。抗不整脈薬ワソラン(ベラパミール)、アスペノン(アプリンジン)、アンカロン(アミオダロン)でも同様の報告がある。 また、麻薬性鎮痛剤 トラマール(トラマドール)や、最近、整形外科などでよく処方されるリリカ(ブレガバリン)という鎮痛剤もふらつきやめまいが頻繁に起きます。 これらは薬剤性パーキンンソン症候群と呼ばれており、脊髄小脳変性症の場合は服用は厳禁です。 服用後数日から数週間で発症することが多く、パーキンソン病よりも進行が早い。パーキンソン病と異なり左右対称性に症状が発現する傾向があり女性・高齢者で起こりやすい。 

2016年10月2日日曜日

シャイ・ドレーガー症候群(Shy-Drager syndrome:SDS)の伝統医学による治療効果

シャイ・ドレーガー症候群(Shy-Drager syndrome:SDS)は、自律神経症状を主要症状とする多系統萎縮症(脊髄小脳変性症)の中の一病型です。 1年ほど前、中年の男性が立ちくらみ、起立性低血圧、無汗、頻尿など自律神経の症状が見られた。 筋固縮などパーキンソン症候群の症状は見られたが、ふらつきや歩行障害などの小脳の症状は認められなかった。 詳細な伝統医学的診断を行い、22種類の生薬処方を作成した。 治療前は上段の図のように、座位から起立してから3分後の血圧が著しく低下する事が分かる。 下段の図は治療後の起立後3分の血圧の低下が軽快していることを示している。処方生薬を服用1ヶ月後にはめまいや起立性低血圧も軽快した。3ヶ月後には頻尿も無くなった。我々の経験ではシャイ・ドレーガー症候群は伝統医学的治療が奏功する場合が多い。