2016年9月25日日曜日

骨髄異形性症候群(MDS)の伝統医学による治療

一昨年、大学病院からの紹介で骨髄異形成症候群(Myelodysplatic synndrome,MDS)の50代の男性が漢方生薬治療を受けたいと来院した。血液検査ではヘモグロビンが5〜6g/dlと重度の貧血があり、白血球数も2000以下に低下していた。 骨髄検査では染色体異常が認められた。貧血のため軽い動作でも息切れがして呼吸が苦しくなる。大学病院の血液科の主治医より定期的に輸血するしかないでしょうと言われていた。骨髄異形成症候群は骨髄の造血幹細胞に遺伝子異常を来した異常クローンが出現し、この異常クローンが骨髄を占拠する結果として骨髄は過形成になるが、遺伝子異常を来したクローンはアポトーシスが亢進しているため増殖できずに寿命が短く分化の途中で死んでしまう。そのため末梢血の赤血球や白血球、血小板が減少し貧血、白血球減少、血小板減少を来す。 原因不明なので、白血球減少にはG−CSF、貧血には輸血やエリスロポエチン投与などの対症療法しか治療法はない。この異常クローンにさらなる遺伝子異常が起きると急性白血病になってしまう。骨髄異形成症候群は其の意味で前白血病状態と云われている。我々はかつて4半世紀ほど前にG−CSFの開発に携わっていた時に骨髄異形成症候群(MDS)の骨髄幹細胞が成熟好中球にまでG−CSFによって分化誘導されることをAmerican Journal of Medicineに報告した。 しかし、MDSの成熟好中球の細菌を殺す能力は正常人の好中球に比べて10%程度に低下していた。 その結果、MDSの患者は肺炎などの感染症を頻繁に発症する生薬治療のメニューを決めるために、まずこの患者さんの中国伝統医学による詳細な診断をおこなった。この方はおそらく以前に前立腺癌のホルモン治療を行ったためであろうと思われるアナボリズムの低下を含む多彩な病態の存在が確認された。診断結果に基づいて28種類の動物性及び植物性の生薬をブレンドした処方を作り上げた。 この処方を3ヶ月間投与したところ、白血球数が一時的に上昇したが、ヘモグロビンはほとんど変化しなかった。そこで、ヘモグロビンを合成するための材料となる生薬を追加処方したところ、一ヶ月後にはヘモグロビンが8g〜/dlになり3ヶ月後には10g〜/dlを超えるようになった。 同時に白血球数も4000〜5000と正常値に回復した。 貧血が改善した結果自覚症状の息切れもなくなり元気を回復した。 

0 件のコメント:

コメントを投稿