2016年9月25日日曜日

視神経脊髄炎と多発性硬化症の伝統医学による治療法の違い

大学病院に勤務している頃より数名の視神経脊髄炎の伝統医学による生薬治療を行い、視力障害や視野狭窄の改善を経験したが、最近、4名の視神経脊髄炎の女性に伝統医学による生薬治療を行った。その経験から、この病気の原因や病態がおぼろげながら見えてきた。この病気は女性が男性より多い。抗 AQP4 抗体陽性視神経脊髄炎は一般的に視機能障害が重篤で再発しやすく治療抵抗性であり後遺症が残存しやすく視力予後は不良である。病理学的には視神経脊髄炎の原因物質は抗 AQP4 抗体であり、多発性硬化症とは異なり抗原抗体コンプレックスによるアストロサイト細胞の障害とそれに引き続く視神経や脊髄の急性炎症がその本態である。伝統医学的病態診断では、この病気の病因はいくつかあるが、直接的には第一に肝経湿熱であると考えられている。従って、治療戦略の第一弾は清利肝胆湿熱法である。肝経湿熱に引き続き営血の毀損が引き起こされ、血流障害により視神経や脊髄の傷害が広範囲に及ぶため強い視力障害、失明、横断的脊髄傷害などが引き起こされる。これに対して治療戦略の第二弾としては清営涼血・養陰活血法が必要であった。 これはTリンパ球による神経髄鞘の傷害(脱髄)が引き起こす多発性硬化症とは病理学的に異なるわれわれの治療経験では多発性硬化症とは伝統医学的病態診断も治療戦略も全く違っていた。 視神経脊髄炎も多発性硬化症も自己免疫疾患であるが、免疫異常それ自体は病気を引き起こす必要条件ではあるが十分条件ではない。 免疫異常が存在しても実際に発病するにはいくつかの条件が必要である。 実際に発病するには、五臓六腑の異常な病態の存在が必要である。 五臓六腑の病態を診断して適切な生薬処方を服用すればこれらの病気の治療が可能であり、再発を防止できる。 

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